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Vol.03

「グローバルに活躍する事務職員」

2016.03.09 掲載

はじめに

京都大学では、近年加速している国際化に対応し、次世代を担うグローバルリーダーとなる人材を育成すべく、学生だけでなく教職員向けにも様々な海外研修の機会を用意しています。職員も研修を通して実践的な英語力やグローバルな思考力を身につけ、大学に戻ってからもその経験を活かし率先して大学のグローバル化に取り組んでいます。今回の特集では、「LEAP(Long-term Educational Administrators Program for International Exchange)」、「ジョン万プログラム」といった海外研修を修了し、語学力を活かして大学のグローバル化を推進してきた職員にインタビューを行いました。

田邉 寛明

2007年度 LEAP修了
(派遣期間:2007.4〜2008.3)
物質-細胞統合システム拠点 総務企画掛

田邉 寛明(2003年採用)

山本 翔

2015年度 ジョン万プログラム修了
(派遣期間:2016.1〜3)
北部構内事務部国際室 国際企画支援掛

吉松 優希(2012年採用)

01

海外研修について

まずそれぞれの研修内容について、教えてください。

田邉

「思えばもう10年近くも前の話なんですね。僕はLEAPでアメリカに行きましたが、その前年は文部科学省の大臣官房国際課で研修生として、日本ユネスコ国内委員会業務の補助(主に旅費事務、委託契約事務、補助金事務、各種会議設営等)を担当していました。その研修は『国際業務研修』というもので、それを修了すれば翌年LEAPに参加することができます。
LEAPの内容は、語学研修や、現地(アメリカ)の大学で国際企画・国際交流業務等に携わる実務研修が中心です。」

吉松

「私が応募したジョン万プログラムは、主に若手職員を対象として、1~3ヶ月の短期または1~2年の長期にわたって海外の高等教育研究機関や国際機関等での実務を経験するというものでした。
派遣先のドイツでは、2014年5月に設置された京都大学欧州拠点、ハイデルベルクオフィスで3ヶ月間勤務しました。研修期間中は、ホームページやフェイスブックによるオフィスの広報活動を行ったり、日本への留学に関心を持つ学生や研究者を集めた交流会を開催したりしました。また、欧州の大学や研究機関等を訪問して今後の連携協力について協議したり、留学フェアに参加して来場者に留学情報の提供を行ったりと、海外の大学関係者や学生と直接関わる機会を多く持つことができました。」

研修内容について

なぜ海外研修に応募しようと思ったのですか?

吉松

「京大に採用されて最初に配属されたのが国際関係の部署だったこともあり、海外研修には以前から興味を持っていました。大学職員の仕事は多種多様ですが、国際化が進む今、どの部署においても、英語を使ったり海外と関わったりする機会が多くなっています。そのため、海外研修を通じて広い視野を養い、大学の国際化を担う一員としての意識や能力を高めたいと考え、研修への応募を決めました。」

研修先で苦労したことや、印象に残っていることはありますか?

田邉

「アメリカの大学の『国際化』というのは、極端に言えば、いかにしてアメリカ以外の国からも学生を連れてきて入学金や授業料を払ってもらい、アメリカ仕込みのアメリカ価値観の卒業生を母国に戻すか、ということだと感じました。アメリカ風の世界にしていこう!母国に戻ってからも社会的影響力を持つような、頭のいい学生が欲しい!というギラギラした印象を受けました。
僕は当時、京都大学で『国際交流』業務にタッチしていましたが、お金を取らずに京大に来てもらう研究者を増やすにはどうすればいいか、外国人を迎えた研究室が大学規模ではなくとも研究室単位で国際化していくといいな、というのどかで優雅なことを考えていました。なので、大学にとっての『国際』観の根本的な違いに混乱したり、自分の英語力が思いのほか伸びないことで消沈してもいました。」

吉松

「私も慣れない環境への戸惑いや語学面での不安から、なかなか主体的に動くことができずに悩んだこともありました。それでも、自分なりに必死に取り組んだ結果、新しい知識や経験、人との繋がりなど、得られたものがたくさんあったと思います。
また、週末には色々な場所へ旅行に出かけました。初めてのヨーロッパで初めての一人旅、少し不安でドキドキしましたが、美しい街並みや景色を堪能し、充実した日々を過ごすことができました。
3か月間という短い期間でしたが、日本での業務だけでは得られない貴重な経験となりました。」

田邉さんは研修とは別に海外勤務の経験もあるとのことですが、どんな仕事をしていたんでしょうか?

田邉

「日本学術振興会という機関の海外事務所である、バンコク研究連絡センターに2年間勤務していました。センターのミッションは研究活動のネットワーク形成・維持です。そういうわけで、バンコクの大学を回って日本学術振興会の売込みをしたり、タイ国内の東西南北様々なところで研究シンポジウムを開催したり、タイ以外の東南アジアの国々を回ったりもしました。
某国でのシンポジウム開催にあたっては現地のカウンターパートと協力し、直前まで何度もメールで連絡を取り実施したんですが、いざ現地に行ってみると『話と全然違うじゃないか』という状態だったことがあります。それを国民性と言っていいのか、こちらの交渉力がお粗末だったと言うべきなのか・・・。しかしそれでもシンポジウム自体は無事終了し、現地の方々はキラキラと満足そうな表情を浮かべていました。これを成功と言わずに何と言うのかと、もう開き直って報告書を書いたのは良い思い出です。
あるときは中国にある北京研究連絡センターの副センター長さんにバンコクに来ていただき、2人であれこれと意見・情報交換をしたんですね。その会談をまとめたものを『アジア地区副センター長会議からの要望書』として東京の本部に提出しました。その結果、バンコク研究連絡センターの人員を増やしてもらうことができました。センター開設以来の念願達成です。当時の僕は副センター長ではありましたが、掛長でも主任でもないヒラ職員でしたので、時勢(これからはアジア!)と形式(副センター長会議!)をしっかりと踏み、筋の通ったことを言えば、役職には関係なく仕事ができるんだという得がたい成功体験になったと思います。」

海外での研修や業務を経験して、良かったと思う点や京大での業務に活かせる点を教えてください。

吉松

「海外研修という形で普段の職場を離れて、新しい視点から客観的に京都大学を見つめ直すことができました。日本では名の知れた京都大学でも、世界での認知度はまだまだ高くありません。今後、様々な分野の業務に携わる中で、研究者・学生・職員それぞれの国際化を意識して、各方面から積極的にサポートしていける事務の体制づくりに貢献できたらと思います。」

田邉

「海外派遣のいいところは、語学の実地研鑽や人との交流といったこともさることながら、隔離された小規模な組織なだけに、何でも自分でやらなければ生きていけない、という状況に身をおけることだと思います。何でもやる覚悟はできますし、裏を返せば、自分で考えて好きなようにできてしまいます。バンコクセンターの人員増はまさにそれだったと思います。よき修行の場です。」

吉松さんが所属している国際室は、まさに国際業務を担当していますよね。
どんな仕事をしているんでしょうか?

吉松

「北部構内事務部国際室は、国際業務にかかる研究室ニーズへの対応、研究者や学生の満足度向上、事務部全体の国際対応能力向上を目的に2015年4月に設置され、海外大学との部局間交流協定締結や外国人研究者の受け入れ、表敬訪問対応、各種事務文書の英文化等を行っています。私は主に、事務本部の国際部署とのやりとりや国際関係の各種通知・調査への対応、日本学術振興会の国際交流事業による外国人研究者の受け入れを担当しています。」

02

今後の展望など

吉松

「これまで、海外で留学フェアに参加して学生と話をしたり、国際シンポジウムの開催にあたり海外の大学関係者とやりとりをした際には、自分自身の語学力の不足を実感しました。大学の中でも、外国人研究者や学生へのサービスが不十分な点はまだまだあると思います。今後、事務職員一人一人がより主体的に国際業務に取り組むことで、それが大学全体としての国際化の推進、サービス向上に繋がればと思います。」

田邉

「海外派遣のいいところは、語学の実地研鑽や人との交流といったこともさることながら、隔離された小規模な組織なだけに、何でも自分でやらなければ生きていけない、という状況に身をおけることだと思います。何でもやる覚悟はできますし、裏を返せば、自分で考えて好きなようにできてしまいます。バンコクセンターの人員増はまさにそれだったと思います。よき修行の場です。」

今後の展望など

田邉さんの言うとおり、語学力は当然のことながら、仕事を進めるうえでのスタンスが重要になってくるのですね。職員個人としての取組が、大学全体の国際化を推進していく力になるのではないでしょうか。

Message

職員採用試験受験者の方へメッセージ

吉松

「京都大学は多種多様な業務に携わることのできる魅力的な職場です。世界に拓かれた大学として日々成長を続ける京都大学で、最先端の研究・教育に触れながら、大学のさらなる発展に貢献できる事務職員の仕事には大きなやりがいを感じられると思います。大学職員の仕事に少しでも興味を持っていただけたら、ぜひ京都大学にいらしてください。皆さんと一緒に働ける日を楽しみにしています。」

田邉

「例えば、京都の街には最近、外国人が溢れていますよね。では、大学の中はどうでしょうか。少なくとも京都の行政や商店が行っているのと同じだけの努力と工夫を、我々大学もしなければいけないと思います。それに必要なことは職員が軒並み英語を話せることでしょうか。それはそうかもしれません。しかし、街としてお店として、外国人に来てもらって何をして欲しいのか明確に定め、それに向けて変更と調整を重ねることのような気がします。例えば爆買いして欲しいから新しい商品を作ったり、イート・イン・スペースを設けたりしています。観光地を回って欲しいから、バスの本数を増やしたり、自転車レンタルを始めたりしています。京都大学として外国人に何をして欲しいのかを考え、見極めて、そのための工夫を少しずつでも行っていく。そういう地に足の着いた国際業務が、この大学にはたくさんあるのではないかと思います。
だからみんなでやりましょう。みんなが国際担当です。」

Comment

最後に英語で一言!

吉松

“Let us work together. I am looking forward to seeing you!”

田邉

“It’s up to you.”