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Vol.11

「チームワークで未来を切り開く!京都大学事務改革への挑戦」

2024.01.31掲載

酒井さん、森田さん、加減さん

向かって左から
・酒井直美(Sakai Naomi) 
研究推進部研究推進課研究支援掛主任
・森田大樹(Morita Daiki) 
本部構内(理系)共通事務部企画戦略課総務調整掛掛員
・加減正樹(Kagen Masaki) 
医学研究科総務企画課予算掛主任

京都大学には、22,000人以上の学生、7,000人以上もの教職員が在籍し、それぞれの教育・研究活動に精を出しています。その活動には、必ず事務的な手続きや処理が発生し、それを担っているのが事務職員です。同時に、膨大な事務作業をいかに効率化、省力化させられるかを検討していくことも、事務職員の重大なミッションです。
今回、そんな重大ミッションを遂行中の業務デザインワーキンググループ(以下、WG)から、加減さん、酒井さん、森田さんにお越しいただき、インタビューしました!

「業務デザインWG」とは…?

組織体系

事務改革に向けた組織体制と業務デザインWGについて

事務改革推進本部会議の下に、複数のWGを立ち上げ、各WGごとに直近の課題から10年後を見据えた課題について検討し、時には連携しながら活動しています。業務デザインWGは、公募で選ばれた掛長以下の若手職員を中心に、所属や業務内容に関わらず、11名のメンバーで構成されています。教員・職員・学生の事務作業負担を可能な限り削減することを目的に、業務の課題を整理し、抜本的な見直しに向けて活動中です。

WGのメンバー

WGのメンバー

WGメンバーへ応募された際の経緯や志望理由を教えてください。

森田

事務改革推進室から職員全員へ向けてのWEB説明会があり、そこで部署横断型のWGが発足することを知りました。私は中途採用で採用されて丸2年が経ちましたが、まだまだ他の部署の方と関わる機会が少なかったので、そこに魅力を感じて応募しました。

森田さん

どのようにして選考されたのですか?

森田

エントリーシートに経歴や事務改革への思いを記載し、それを基に選考されましたね。

日頃から課題意識を持っていらっしゃったのですね。

森田

そうですね。前職や海外での経験を踏まえて、改善案を提案しました。

素晴らしい意識ですね。酒井さんの応募の動機もお伺いしてもいいですか?

酒井さん

酒井

森田さんと似ていますが、様々な部署や役職の方々と一緒に議論しながら活動することは、本務の仕事とはまた違う面白さがあると思ったので応募しました。また、普段から自分が担当している業務をどう改善できるか試行錯誤していましたが、個人だとできる範囲に限界があります。業務デザインWGでは、大学全体の規模の事務改革に携わることができるということも魅力的だなと思いました。

WGでの取り組みについて教えていただけますか?

加減

1年半の任期内でスピーディーに有益な取り組みを進めるため、既存業務における有効な施策を短期的に実施していく短期施策検討チームと、現場の課題の本質を調査するヒアリングチームの2つのチームに分かれて活動しました。
短期施策検討チームは、DXWGとも連携した合同プロジェクトチームのもと活動しており、酒井さん、森田さんも参加されています。

酒井

短期施策検討チームでは、電子決裁、RPA、FAQの各種システムの導入を提案しました。これまで学内で新システムを導入する際には基本的には担当部署のみで導入を検討することが多かったのですが、学内の多くの利用者の目線に立ったときに複数の関係部署で連携して導入をした方がより良いものになると考えました。そこで単にシステムを入れることだけでなく、部署横断的にプロジェクトを立ち上げるよう提案しました。例えば今回のFAQシステムは学生向けの授業料の納付や授業料免除の申請の手続きの問合せを自動化するものですが、これを学生担当の教育推進・学生支援部だけでなく、お金を管理する財務部とも一緒に検討していただくよう提案しました。そして実際にその通りにプロジェクトが立ち上がり、システム導入にこぎつけることが出来ました。

加減

私が参加するヒアリングチームでは、業務の効率化を妨げる要因を把握するため、共通事務部及び部局の事務職員にアンケートを実施し、その結果から見えてきた課題を具体化するため、実際の職場に足を運び、ヒアリング調査を行いました。
現在、その分析を終えたところで、今後、課題に対応する施策を検討し、事務改革推進本部会議へ提言を行う予定です。
また、併せて外部視察も実施しており、現在京都大学が抱えている課題を、民間企業や他大学がどのように取り組まれているかを調査し、それをWGに持ち帰って検討を進めております。

加減さん

アンケート回答はどうでしたか。

加減

我々が働いている中で当たり前になりつつある課題が浮き彫りになりました。それを整理し、今後の指針を考えていくことが我々の役割です。

なるほど。ではそのアンケート結果を踏まえて行ったヒアリング調査はどうでしたか?

加減

23部署、約80名の方にご協力いただきました。各事務部に足を運び、1部署あたり2~3時間程度ヒアリング調査を行ったため、大変でしたが、現場での課題感を具体的に可視化することができました。

ヒアリング調査結果報告の様子

ヒアリング調査結果報告の様子

調査の結果、改善案を検討する課題は見つかりましたか?

森田

はい、多くの課題が浮かび上がりました。業務のDX化にも取り組んでいく必要がありますが、普段の業務を単純に電子化するだけではなく、業務方法そのものやルール自体の見直しも検討する必要があるということが分かりました。これらのヒアリング結果をもとに、WG内で新チームを結成し、今後の改革に向けた提言を作成しています。

外部視察はどうでしたか?

森田

民間企業、公官庁、他大学…色々なところに行かせていただきました。

加減

京都大学よりも一歩先の取組みを実施している組織に焦点を当てました。

視察先の情報収集方法は?

加減

インターネットでの検索が基本だったので、バックオフィスの事務改革に関する情報を得ることにはとても苦労しました…色々なWEBサイトを見て、気になった取組みがあれば問い合わせフォームからご連絡してアポを取る…といった感じです。

コミュニケーション能力が問われそうな業務ですね。

森田

そうですね。基本的なことではありますが、視察の趣旨を丁寧に説明すること、また視察に伺う際は事前に取組みをしっかりとリサーチし質問事項をまとめ、スムーズに視察が進むよう努めました。

他大学との違いはありましたか?

加減

私立大学の方からは、「私たちは改革の指示がトップから出て、指名された職員がそれに従って進めていくスタイルです。京都大学のように公募でWGを組織し、そこから派生してプロジェクト化するステップは理想的だと感じました。」と言っていただけました。京都大学の方法では時間がかかり過ぎるデメリットもあると思っていたのですが、意外に好意的に捉えていただけたのが印象的でした。

視察報告

確かに、職員のモチベーションのことを考えると、このように改革していくのが一番良い形だと思います。あと、学内広報の一環でWGでの取組みを紹介する10分動画、拝見しました。森田さんが大活躍されていましたね(笑)

「10分で分かる京大事務改革」動画撮影中!

「10分で分かる京大事務改革」動画撮影中!

森田

ありがとうございます(笑)先ほど述べたように色々と活動しているのですが、それがあまり学内で認知されていないということもヒアリングの中で分かったことの一つです。
事務改革には、大学内の協力が不可欠で、その賛同を得るためには広報が不足していると感じ、動画を作ることにしました。そのため、WG内で短期施策検討チームやヒアリングチームとは別に広報チームを作り、今までの取り組みや概要を学内に広く周知するための企画を考えることにしました。私と酒井さんは広報チームを兼務しております。
この企画の一番の目的は、多くの職員に取組みを知っていただくことだったので、気軽に見てもらえる動画となるよう意識しました。4つのテーマに分けて作成しましたが、動画の時間を10分としたことも気軽に見てもらえるための工夫の1つでした。また、普通にスーツを着て出演するつもりでしたが、画面上でも堅い雰囲気にならない工夫ができないか…と考えた時に、「法被や!」と思い提案しました。上司に許可をいただき、好きなようにやらせてもらいました。
ただ、意外とインパクトが大きく、フィードバッグでも「これめっちゃ面白いやん!」という声を多数いただいています。

部署横断型のプロジェクトで、色んな職員がいるメリットがここで活かされていますね。
広報として良いコンテンツだと思います。

加減

他人事と思われがちな事務改革を、自分事として捉えてもらうため、多少ふざけていると思われても、まずは知ってもらうことに重点を置きました。

森田

真面目な説明会とは違った印象を与えられたらいいなと思います。そして、職員一人ひとりが事務改革に取組む当事者として多様な改革を始めるきっかけにしていただきたいです。

素晴らしい。関心を持ってもらうには、最初に観る側にインパクトを与えることって大事ですよね。

酒井

さらに今回のポイントは、ゲストの方をお呼びしたことです。WGメンバーだけで完結するのではなく、WGに参加していない新卒から掛長までの幅広い職階の方に動画にご出演いただくことで、WGに参加されていない方も共感できる内容になっていると思います。

ゲストの皆さんと談笑

ゲストの皆さんと談笑

ゲストの方も事務改革に対して当事者意識を持つようになり、それを各部署に持ち帰れば、この活動の輪が広がりますよね。通常業務との両立はどのようにされていますか。

酒井

WGでの活動については、人事手続き上も本務とは別に兼務発令されているので、堂々と業務時間内に活動できるのですが、やはりどうしても本務にかけるエフォートは100%ではなくなってしまいます。そのことで本務に支障がでないよう、効率化を強く意識できるようになったことは大きな収穫です。WGで得た知識や考え方は、自分の部署に持ち帰り、共有することも心掛けています。

本務もWGも風通しが良いことは重要ですよね。
醍醐味ややりがい、大変なことについてもお伺いしたいです。

森田

トップダウンではなく、自分たちが足を使って調査し、課題を見つけ、改善していくことで熱量を持って取り組むことができることが醍醐味で、同時に苦労したことでもあります。
例えば、学内へのヒアリング調査を通常業務の合間を縫って2ヶ月かけて実施したのですが、日程調整を行ったり、桂キャンパスや宇治キャンパスに出向いたり…WG全体として実施していくうえでの業務分担にも苦労しました。本務が疎かにならないよう、しっかりと対応していくことが大変でした。

加減さんはどうですか?

加減

各部局や共通事務部に既存の業務における課題についてヒアリングを行い、その後分析を行うのですが、この分析作業がとても大変でしたが同時にやりがいもありました。具体的には、トヨタ自動車が発案した問題の真因を把握する分析手法を用いてアプローチしました。課題に対して「なぜ」を繰り返し、深堀りすることで本当の原因を探っていったのですが、多様な業務における様々な課題の原因は複雑に絡み合っており、1つの「なぜ」が様々な課題に繋がっていくことで分析の論点がどんどん複雑になり、「真因はどこにあるのか」、「出てきた真因は本当にこれで合っているのだろうか」、「現場の課題に対して自分の先入観からバイアスがかかっていないだろうか」など混乱し、いわゆる沼にはまっていきました。ただ、そういう時でもWGには色んなバックグラウンドを持った頼もしい仲間がいるので、資料の作成状況をSlackで気軽に共有したり、アドバイスを頂いたりすることで沼から抜け出せなくなるような事はありませんでした。
このようにWGでの最大のやりがいは、普段の業務で共に仕事をする機会がない人とも一緒に仕事をすることができ、またモチベーションが高い人が多いので通常業務とは違った楽しみがプラスで持てることだと思います。
また、「なぜなぜ分析」など普通の業務では行わないような事も行うので自身のスキルアップにも確実に繋がりますので、そういった事も含めてやりがいに繋がると思います。

なぜなぜ分析の結果報告

なぜなぜ分析の結果報告

酒井さんはどうですか?

酒井

異なるバックグラウンドのメンバーとの議論からは新しい発見があり、各自の強みに触発されてモチベーションが上がることが醍醐味だと思います。一方で、実際の部署での施策のトライアルが難しい側面もあります。例えば、自分の所属する部署もトライアル対象になることがあり、忙しい業務の中でトライアルを両立する難しさがありました。この問題は他のトライアル部署も抱えている可能性があり、どのように改善できるか模索しています。

やってみないとわからない問題も発生しますよね。

森田

そうなんです!時間をかけてプロジェクト化し、準備万端でトライアルに挑んでも、うまくいかないこともあります…しかし、問題が起こった際は、さらに取組内容をブラッシュアップする機会だとポジティブに捉えて、一歩ずつ前進していくことが大切だと思います。

素晴らしいですね。諦めない限り失敗はないですもんね。

加減

何か新しいことを始めるときに、デメリットの方ばかりに注目してしまうのではなく、トライ&エラーで改革を進めていくことも、目まぐるしく情勢が変わる現在においては大切なのではないかと感じています。

試行錯誤のなかで、どのようなゴールを思い描かれていますか。

酒井

大きなゴールは、「京都大学の教育力・研究力の持続的発展」です。具体的には、「教員と職員が相互に理解し尊重し合う真の教職協働を実現する」ことが理想です。これは、WG発足時にメンバー全員で議論して掲げた目標です。

メンバーの共通認識の確立が、スタートの重要な一歩ですね。

酒井

そうですね。最初にメンバー全員で、このWGでの目標を付箋に書き、ホワイトボードに貼って、整理して…ということから始まりました。

加減

この共通認識があるおかげで、取り組むべき課題が明確になり、メンバー全員の足並みを揃えて着手することができました。

WG活動をしていくなかで、大切にされていることはありますか。

加減

各々色んな考えやバックグラウンドがあるので、意見交換をする際は、全く違った意見が集まります。そんな中で、「相手の意見を否定しない」ことが各自の意識として根付いていると思いますし、私自身も気をつけています。モチベーションの低下や雰囲気の悪化を避けるため、自然とその意識が芽生えたのだと感じます。

ミーティングの様子

最後に、京都大学職員を志望される方への熱いメッセージをお願いします!

加減さん

加減さん

社会情勢や大学を取り巻く環境は大きく変わってきており、京都大学も組織や業務の在り方を早急に見直す必要があります。
そうした中、WGという最前線で、モチベーションの高いメンバーと共に京都大学のこれからを作っていくというとても魅力的で挑戦的なことに携わることができています。
何も特別なスキルはいりません。「京都大学のこれからを真剣に考えたい。役に立ちたい。」この想いだけで十分です。
京都大学が変わるには、多くの職員が変革について真剣に考え、一丸となって取り組む必要がありますので、是非多くの人に応募いただけたらと思います。
酒井さん

酒井さん

京都大学の事務改革は過渡期を迎えています。私達は大きな目標を掲げ、まず短中長期的にどんなことができるかを考えているところです。今志望してくださっている方々が入職される頃には、その取り組みが発展している頃だと思います。過渡期に入職いただくからこそ、京都大学がより良くなるための変革を柔軟に受け入れていただけたら嬉しいです。ぜひ、京都大学のこれからのために一緒に取り組んでいきましょう!
森田さん

森田さん

今、京都大学事務職員は大学運営のプロになることが求められています。時代の変化に応じて職員の在り方も変わりますが、共通する大切なことは、変化を恐れず前向きに挑戦することです。学内外での連携の機会が増えつつある中、新しい変化を受け入れ、楽しんでいただきたいです。仕事に全力で向き合い、充実感を得ることは人生をより豊かなものにします。一緒にワクワクしながら、京大を世界一の大学に盛り上げましょう!
これまで、事務職員は「縁の下の力持ち」とされていましたが、事務職員も大学を盛り上げる一端を担いたいと思い、業務デザインWGに参加しました。このインタビューをご覧になって、「京大面白そうやん!」と感じていただけたら嬉しいです。どうか多くの方が応募してくれることを願っています。